闇に降りた天使

祈り

私は世界史の授業が好きだった。特に、美術に関するパートはわくわくさせてくれる存在だった。
あのころ、私の実家は父が躁うつ病で仕事へ行っておらず無茶苦茶だった。その中で、一生懸命受験勉強してきた。副教科は皆あまり力が入らないものだが、私は一生懸命勉強した。

そんな折、レンブラントの絵に出会った。レンブラントの絵は、光が主役だ。主人公に光が当たるのではなく、主人公そのものから光が立ち上る──その逆転の構図に、私は衝撃を受けた。

「この主人公は、闇の中で孤立しているのではない。闇のただ中で、すでに光を宿しているのだ」
そう感じた瞬間、私の胸の奥で何かが震えた。

当時の私は、家の混乱や将来への不安に押しつぶされそうだった。外から見ればただの受験生かもしれない。しかし私の心は、いつも深い闇の底にいた。誰にも気づかれない水の底で、必死に呼吸していた。

それでも──レンブラントの光は私に語りかけた。
「闇はただの敵ではない。闇は、光が生まれる場所でもある」と。

この作品の天使も、同じ場所に立っている。
彼女は闇を払いのけているわけではない。闇の中に降り立ち、そのただ中で灯りをともしている。

私は長いあいだ、自分の弱さや病気を“闇そのもの”だと思っていた。しかし今は違う。苦しみの奥にこそ、私を支える光があったのだと気づいた。家族の存在、教会での祈り、友人の一言、そしてこの創作──それらはすべて、闇の底に差し込んだ小さな灯りだった。

レンブラントが描いたのは、外から照らされる人間ではない。闇を抱えながらも、内側から輝く人間だった。
この作品に立つ天使もまた、私にこう告げている。

「あなたの闇は、あなたの光でもある」と。

だから私はこの作品を、こう名づけた。
『闇に降りた天使』。

闇の底にも、やさしい灯りが降りてくる。
天使は静かに、私の手を温める。

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