
私はこの時期、受験を経験した。
父は働いておらず、家計は決して豊かではなかった。
だから私にとって進学の選択肢は多くなく、地元の国立大学に進むことが事実上の唯一の道だった。
試験は二日間に及んだ。
しかし、その初日――数学のテストで私は大きくつまずいた。
答案用紙を前に、頭が真っ白になったあの感覚は、今でもはっきり覚えている。
帰り道、家の敷居がこれほど高く感じられたことはなかった。
まるでこの作品の受験生のように、どこか遠くへ向かう電車に飛び乗って逃げてしまいたい気持ちだった。
家に着くと、母が静かに言った。
「大丈夫?無理せんでええよ。」
その一言で、張り詰めていたものが一気にほどけ、私は声を上げて泣いた。
悔しさでも、情けなさでも、安心でも、どれとも言えない涙だった。
しかし翌日、理科の試験で私は踏みとどまり、挽回することができた。
そして私は、無事に第一志望に合格した。
いまこの季節になると、街や電車で緊張した面持ちの受験生をよく見かける。
その姿を見るたびに、私は心の中でそっとエールを送っている。
声を大にして伝えたい。
――「なんとかなる」と。
超えられない壁はない。
むしろ、多くの場合、壁を高くしているのは自分自身の不安だ。
この作品の受験生もまた、孤独の中で自分と向き合っている。
それでも彼は前を向き、電車に乗ろうとしている。
その姿は、あの日の私そのものでもある。
どうか今年の受験が、あなたにとって“乗り越えられる一日”でありますように。
そしてその先に、小さくても確かな希望がありますように。
