凍てつく湖

夜と光

私は、あのとき凍てつく風吹きすさぶ湖面に佇んでいたのかもしれない。

私は30歳で「双極性障害」と診断された。それまでは長く「抑うつ状態」と言われていた。もちろん、調子に波があったのは事実だ。会社の同期と遠出したり、合コンを企画したり、習い事に打ち込んだり、大きな仕事を成し遂げたこともある。

しかし年を重ねるにつれ、土日はまったく体が動かなくなった。寝だめして体力を回復させ、月曜には無理やり仕事へ向かう――そんな日々が続いた。限界を感じ、精神科の門をたたいた。

長い診察のあと、母とともに再び呼ばれた診察室で、医師は静かに告げた。
「あなたの病名は双極性障害です。お父さんから遺伝した可能性が高いでしょう。」

その瞬間、私の周りを凍てつく風が吹き抜けたように感じた。
「あの父と同じ病なのか。自分も同じ末路をたどるのか。」
頭の中が真っ白になった記憶が、いまも鮮明に残っている。

しかし同時に、どこかで私は知ってもいた。
「もしかすると自分も同じ病なのかもしれない」と。

だからこそ、この作品の女性は、凍てつく風にさらされながらも動かずに立っている。いや――立ち続けている。

それは弱さではなく、私たちの強さだと思いたい。

この世界には、数え切れないほどの病がある。誰もが自分だけの風に吹かれながら、それでも今日を生きている。

病名を告げられる夜は、誰にとっても凍てつく夜だ。
それでも私たちは立ち続ける。
その姿こそが、この凍える湖に宿っている。

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