
- 振り返れば、影の中にも私を支えた翼があった。いま私は、未来へ伸びる光の道を静かに踏み出していく。
この作品は、苦しかった過去を乗り越え、未来への希望を見出し、新しい自分へと歩いていく、その静かな変化の瞬間を描いたものだ。
振り返れば、私は確かに苦労をしてきた。
重たい環境のなかで過ごした時間、心をすり減らしながら歩いた日々があったことに疑いはない。
苦しみは現実だったし、決して軽いものではなかった。
けれど同時に、すべてが苦しみだったわけでもない。
楽しい時間も、確かにあった。
合コンで笑った夜もあったし、会社で信頼を得て、大きな仕事を任され、やり遂げた経験もある。
新製品のテーマ提案会で、ベストプレゼン賞をもらったこともあった。
だから私は、過去のすべてを「間違いだった」と切り捨てることはできない。
苦しかったけれど、意味がなかったわけではない。
壊れかけたけれど、何も残らなかったわけでもない。
そう思えるようになったのは、たぶん最近のことだ。
そして今、私は会社を辞め、フリーランスとして生きている。
会社を辞めれば体調がすぐに良くなる、そんな単純な話ではなかった。
この病気は、そんなに都合よく消えてはくれない。
それでも、自分が選んだ場所で、自分が選んだ速度で生きることはできる。
そのなかのひとつが、この創作活動だ。
「自分の未来は輝いている」と胸を張って言えるほどの確信は、まだない。
けれど、過去に縛られ続けていたころとは違う、かすかな光を感じることはできている。
それは大きな希望ではない。
劇的な変化でもない。
ただ、昨日より少しだけ呼吸がしやすくなった、そんな感覚だ。
それだけで、私にとっては十分だった。
この作品で描いた天使は、飛んでいない。
翼はあるけれど、空へは舞い上がらず、地に足をつけて歩いている。
過ぎ去った過去を背にしながら、
まだ輪郭のはっきりしない未来のほうへ、静かに足を運んでいる。
それは、劇的な再生ではない。
派手な逆転でもない。
ただ、「もう立ち止まらなくていい」と自分に許した、その一歩だ。
私はそんな歩みを描きたかった。
壊れた過去を否定するためではなく、
そこから続いている時間のなかで、いまを生き直している自分を肯定するために。
この天使は、希望の象徴ではない。
むしろ、迷いを抱えたままでも進んでいい、と示す存在だ。
静かに、確かに、未来のほうへ。
そうして歩いていくこと自体が、もうひとつの「光」なのだと、私は思っている。
